哲学と精読

共通テストは辛い

どうしても英語長文が読めない人への処方箋

読めているとは、どういうことか?

文法と単語をしっかり勉強しているのに、長文が読めない。一般的な受験生にはつきものの悩みである。

まずは目標を定めておきたい。

読めている》とは、

筆者の主張を、その根拠とともに理解することであり、かつ、その主張の展開を適切に追跡できている状態のことである。

大学二次試験の英語長文の大半は、説明文論説文の構造をとっている。共通テストの場合だとまた事情は変わってくるが、ここでは論じない。

形式段落を手がかりにする

形式段落は、書き手が施しているヒントのようなものである。段落が切り替わるということは、何らかの形で、話に展開があるということである。

つまり、それぞれの段落には、筆者の主張を理解する上でのポイントがあるということである。例えば、7つの形式段落があるとして、

①問題提起(タイヤゴミがゴミ捨て場に放置されている)

②具体的な問題1つ目(感染症をもたらす動物の住み家となる)

③具体的な問題2つ目(火災が発生すると鎮火しにくく、有毒物質の発生原因にもなる)

④具体的な問題3つ目(そもそも資源の無駄遣いである)

⑤解決策1つ目(火力発電の燃料として用いる)

⑥解決策2つ目(リサイクルして他の製品に作り変える)

⑦まとめ(まだリサイクル率は低いが、今後に期待である)

このように各段落は、筆者がその主張を理解させる上で、一定の役割を果たしている。

この視点をもつだけで、長文全体の見え方が変わってくると思う。

そもそも形式段落の役割が見えない…場合

これは、そもそも各段落の役割がうまく要約できていない場合である。

段落は、数文の英文から成っている。

それらが具体的にどのような役割を果たしているのかを検討しよう。例えば、次のような段落を考察したいとき、

Around the world, billions of tires from trucks and cars are replaced every year. In the United States, about 260 million used truck and auto tires are thrown away every year. Where do the old tires go? Quite often, they go into large dumps where they remain for many years.

まず、文に分けて正確に訳読しながら、各文の段落における役割を考えよう。

①Around the world, billions of tires from trucks and cars are replaced every year.

②In the United States, about 260 million used truck and auto tires are thrown away every year.

③Where do the old tires go?

④Quite often, they go into large dumps where they remain for many years.

詳細な検討

①はどうだろうか?筆者は何を言っているだろうか?

「世界中で、何十億ものタイヤが取り替えられている」ということは、それだけタイヤのゴミが発生するということである。①ではまだそのことは触れられていないが、②を読むとそのつながりが見えてくる。

②では、具体的にアメリカでどれくらいのタイヤゴミが発生しているかを述べている。

つまり、①でタイヤのゴミが大量に発生することの前提を述べた上で、実際に大量のゴミが発生していることを②で確認しているのである。

次に③では、そのゴミがどこに行っているのかを問い、④でその問いに答えている。

注目したいのは、they remain for many yearsである。ゴミが多いことも問題なのだが、その上「長年放置されている」ことを問題視しようとしているのである(このことは次の段落とのつながりにおいて、見えてくるものではあるが)。

まとめると、毎年のようにタイヤゴミが大量発生し、それがゴミ捨て場に放置されているということを、筆者が問題視していることが分かるだろう。

ミクロマクロを行き来する

木を見て森を見ず》という言葉があるが、今回の詳細な検討では、やや木に寄った見方であった。しかしながら、それが森につながる見方でもあることはご理解いただけたと思う。

第1段落で述べらていることが、タイヤゴミの放置問題であることを掴めれば、その後の段落の読みやすさは格段に異なるだろう

 

筆者が本文全体を通して、何を言おうとしているのか?

それを伝える上で、この段落はどのような役割を果たしているか?

段落がある役割を果たす上で、各文がどのように機能しているか?

 

こういった問いを投げかけながら、精読していくと、思考力の伴った読解力へと進むことができるだろう。